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Google WorkspaceかM365かで迷う会社へ、AIは今の契約で決めていい

公開: 2026年8月22日 7分で読めます(約3,635文字) 執筆: 北村 惇士(プロフィール

「AIを入れたいのですが、うちはGoogleとMicrosoftのどちらで進めるべきでしょうか」——ここ最近、この質問を受ける機会が増えました。比較資料を集め、機能表を並べ、それでも決まらないまま数か月が過ぎている。そういう会社が、実際にあります。

先に結論をお伝えします。**すでにどちらかで日常業務が回っているなら、その側で始めるほうが現場に残ります。**機能の優劣ではなく、人の脳が新しい手順をどう扱うか、という理由からです。

比較表を見比べている時間が、いちばん高くつく

機能比較で決めきれない理由は、はっきりしています。両社とも十分な機能を持っていて、差は日々埋まっていくからです。今月時点の優劣で決めても、来月には前提が変わります。

一方で、比べている間も業務は止まりません。転記も、報告書づくりも、議事録の整理も、毎日発生し続けます。決めない状態そのものが、いちばん重い負担になっている——これが、多くの現場で起きていることです。

新しい道具が面倒なのは、意志の弱さではない

現場に新しいツールを配ったのに使われない。この現象を「意識が低い」で片づけると、次も同じ結果になります。

神経科学の総説では、習慣的な行動は大脳基底核を含む回路の経験依存的な可塑性から生まれる、と整理されています(Graybiel, Annual Review of Neuroscience, 2008 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18558860/ )。毎日繰り返している手順ほど、脳の中で「考えなくても動ける形」に畳み込まれていく、ということです。

新しいツールへの切り替えは、その畳み込みを一度ほどいて、また一から積み直す作業にあたります。同じ仕事をしていても、体感の負荷だけが上がる。現場が渋い顔をするのは、その負荷を身体が先に知っているからです。

だから、AI導入で最初に考えるべきは「どのツールが優れているか」ではなく、覚え直す量をどこまで小さくできるかのほうです。すでに毎日開いているアプリの中にAIがあるなら、覚え直すのは操作ではなく使いどころだけで済みます。

いま、AIは「すでに契約している側」に入っている

数年前なら、この話は「別途AIツールを契約する」という前提で終わっていました。状況は変わっています。

Microsoft側の公式ドキュメントには、こう書かれています。

Copilot Chat は、対象の Microsoft 365 サブスクリプションを持つ組織に自動的に含まれて使用可能になる、AI のプロンプトと応答のエクスペリエンスです。

—— Microsoft Learn「Microsoft Copilot のライセンス オプション」

同じページで、Webベースのチャットは追加料金なしで含まれ、社内の情報を参照する職場ベースのチャットは Microsoft Copilot ライセンスで利用する、と区切られています。触ってみるだけなら今の契約のまま、深く使う段になって追加、という設計です。

Google側では、2025年1月に Google Workspace の Business エディションと Enterprise エディションへAI機能が追加され、それまで必要だった Gemini Business - Legacy などのアドオンは購入できなくなりました(Google Workspace 管理者ヘルプ)。既存のデータ保護の設定が、そのまま新しいAI機能にも適用されます。

図1|既存契約に含まれるAIの範囲(各社公式ドキュメントより・2026年8月時点)
既存契約に含まれるAIの範囲(各社公式ドキュメントより・2026年8月時点)Microsoft 365 側Google Workspace 側日常のAIチャットWebベースのチャットは対象サブスクリプションに自動的に含まれるBusiness・Enterprise エディションにAI機能が含まれる(2025年1月〜)社内情報を見る層職場ベースのチャットは Microsoft Copilot ライセンス(アドオン)以前必要だったGeminiアドオンは購入不可になり、エディション側へ統合管理者が触る場所Microsoft 365 管理センターでのライセンス割り当て既存の管理コンソール。今のデータ保護がそのまま適用入口になるアプリOutlook・Teams など、すでに毎日開いているアプリGmail・ドキュメント・Meet など、すでに毎日開いているアプリ

出典: Microsoft Learn「Microsoft Copilot のライセンス オプション」/Google Workspace 管理者ヘルプ をもとに自社作成

見えてくるのは、両社とも「まず触れる範囲」を既存契約の中に置いたという共通点です。入口の段階で新しい契約を増やす必要は、以前ほどありません。

だから判断はこうなる——今どちらで仕事しているか

ここまでを重ねると、判断軸はかなり単純になります。

メールがOutlookで、ファイルがSharePointにあり、会議がTeamsなら、Microsoft側で始める。メールがGmailで、ファイルがドライブにあり、会議がMeetなら、Google側で始める。それだけです。

理由は3つあります。ひとつ、覚え直す量が最小になること。ふたつ、権限とデータ保護の設定を作り直さずに済むこと。みっつ、AIが参照すべき情報が、すでにその側に集まっていること。

3つ目は見落とされがちですが、実務では効きます。AIの出力の質は、渡せる材料の量でほぼ決まるからです。情報が置かれていない側にAIを立てても、材料のない状態で答えを作らせることになります。

ライセンスで決めないほうがいい会社もある

正直に書いておくと、この判断がそのまま当てはまらないケースもあります。

メールはGoogle、ファイルはSharePointのように、すでに二重で運用している会社。この場合、AIをどちらに載せるかより先に、情報の置き場所を片方へ寄せる判断が要ります。AIの話ではなく、置き場所の話です。

基幹システムや取引先の指定で、片方に強く縛られている会社。ここは選択の余地がそもそも小さいので、縛られている側で組み立てます。

社内の情報が紙とローカルPCにしかない会社。この状態では、どちらを選んでも材料が出てきません。先にやることは、AIの選定ではなく置き場所づくりです。業務の棚卸しから始める順序のほうが、結果として近道になります。

全部をAIで解こうとしないこと。関数で済む集計、RPAで足りる転記、AIに任せる非定型——道具の使い分けを先に整理しておくと、選定の議論そのものが短くなります。

最初の一手をどこに置くか

契約側を決めたあと、最初の一手の置き方で定着が分かれます。判断は2軸で足ります。すでに毎日開く画面かどうかと、手順をどれだけ作り直すか。

図2|最初の一手をどこに置くか
最初の一手をどこに置くか手順書から書き換える場所は変えない最初の一手にしない最も続かないここから始める下書き・要約・転記部署を絞って試す旗振り役がいる所だけ大きい小さい手順の作り直しすでに毎日開く画面新しく開く別の画面AIを置く場所

出典: 自社作成

左下から始めるのが定石です。メールの下書き、議事録の要点整理、報告フォーマットへの転記——すでに開いている画面の中で、手順をほとんど変えずに済む作業。ここは、誰にも「新しく覚えてください」と言わずに始められます。

右上、つまり新しい画面を開いて手順も作り直す組み合わせは、最初の一手には向きません。効果が大きく見えるほど、そこから入りたくなるのですが、たいてい3か月後には誰も開かなくなっています。

自社でやってみて分かったこと

自社はGoogle Workspaceで日常業務を回しています。だからMicrosoft側の検証は、別に環境を用意して行っています。この分け方をしているのは、日常の動線と検証の環境を混ぜると、どちらの結果も濁るからです。

議事録の要点整理、営業管理の進捗更新、コンテンツの初稿づくり——このあたりをAIエージェントで回していますが、定着したものには共通点がありました。すでに毎日開いている場所に置いたものだけが残った、という点です。新しいダッシュボードを作った時期もありましたが、そちらは静かに開かれなくなりました。

もうひとつ。AIで「できない」と分かること自体にも価値があります。試して無理だと分かれば、そこに時間を積まずに済む。無理だった作業は、関数や手順の見直しで片づくことも多くあります。

決めるのは、道具ではなく順番

Google WorkspaceかMicrosoft 365かという問いは、実のところ「どちらが優れているか」ではなく「どちらの上で自社の情報が動いているか」への問いです。答えは、すでに手元の契約書に書かれています。

決めたら、次は一点だけ選んで動かす。進め方のページに90日の骨格を整理していますし、AIエージェント導入の全体像から関連する記事をたどれます。

比較表を眺めている時間を、最初の一点に振り替える。それが、いちばん早い進み方だと考えています。

自社のどちら側で、どの業務から始めるべきかを整理したい場合は、無料AI診断からご相談ください。今の契約と業務の流れを伺いながら、最初の一点を一緒に決めます。

本記事の内容は公開時点の情報に基づきます。自社実績に言及する場合は社内集計値であり、 事例は守秘義務に基づき業種・数値を抽象化したモデルケースを含みます。 製品仕様・料金は必ず各公式サイト(一次情報)をご確認ください。

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