生成AIとは——「探すAI」と「作るAI」の違い
指示に応じて、文章・画像・表・コードなどを新しく作り出すAI。データベースから答えを探すのではなく、その場で組み立てて返すところがこれまでのシステムと違います。
社長や役員から「うちもAIを入れたい」と言われたとき、その「AI」がほぼ生成AIを指すようになったのは、ここ数年のことです。言葉が先に広まった結果、何ができて何ができないのかが曖昧なまま導入の話が進み、途中で止まる会社を何度も見てきました。
最初の一歩として、生成AIが何をするものなのかを押さえておきます。
「探すAI」と「作るAI」
これまで会社に入っていたシステムの多くは、あらかじめ決めた場所から答えを探してくるものでした。在庫データベースを引く、条件に合う顧客を抽出する、帳票を決まった形式で出力する。どれも、答えはすでにどこかに存在しています。
生成AIは違います。答えをその場で組み立てます。
「先週の議事録から、先方への確認事項だけを箇条書きにして」と頼めば、そんな箇条書きはどこにも保存されていないのに、読んで、選んで、書き出してきます。文章だけでなく、画像・表・プログラムのコードでも同じことが起きます。
この「作る」という性質が、便利さの理由でもあり、注意が要る理由でもあります。探してきた答えは元データを見れば検算できますが、作られた答えは元がありません。だから確認の仕方が変わります。
部活の現場でいうと
練習と試合では、頭の使い方がまるで違います。
練習メニューは、決まっています。今日は何本、どのフォームで。答えが先にあって、それをこなす。
試合は違います。誰が前を泳いでいるか、残りが何メートルか、体がどこまで残っているか。その場で組み立てないと、一かきも決まりません。
私は4歳から水泳をやっていましたが、練習のタイムが良くても試合で勝てない子は、たいていここでした。決まったメニューをこなす力と、その場で組み立てる力は別物です。
生成AIが引き受けるのは、試合のほうです。だから業務に当てるときも、まずここを見ます。練習メニューの仕事なら、関数やRPAのほうが速くて確実。 毎回条件が違って、読み取りと判断が要る仕事が、生成AIの領分です。
得意なこと、苦手なこと
導入相談では、この線引きを最初に共有しています。
| 生成AIの領分 | 別の道具の領分 | |
|---|---|---|
| 仕事の性質 | 毎回少しずつ違う | 毎回まったく同じ |
| 入力 | 文章・画像・音声など形が揃わないもの | 表形式で揃っているもの |
| 求める結果 | 下書き・要約・案出し・分類 | 正確な計算・確実な転記 |
| 例 | 議事録から要点を抜く、問い合わせの一次返信案 | 消費税の計算、決まった様式への転記 |
売上の合計を出すのに生成AIを使う理由はありません。表計算の関数のほうが速く、間違えず、誰でも検算できます。逆に「この問い合わせは苦情か質問か」を仕分けるのは、条件分岐で書き切るのが難しく、生成AIが向いています。
全部をAIにする必要はない、というのはこの意味です。業務をタスクに分解して、ばらつきのあるところにだけ当てる。それが結果として一番安く済みます。
そのまま業務に載せると、たいてい止まる
試しに使ってみた担当者が「思ったほど使えない」と言って離れていく——導入の初期にいちばんよく起きる展開です。原因の多くは、AIの性能ではなく渡した情報の量にあります。
社外の人に仕事を頼む場面を想像すると分かりやすくなります。優秀な人でも、自社の商習慣・前任者の判断・社内の呼び方を知らなければ、当たり障りのない答えしか返せません。生成AIも同じで、素の状態では自社の事情を何も知りません。
ここを埋める作業には名前がついています。頼み方を工夫するのがプロンプトエンジニアリング、渡す情報のほうを整えるのがコンテキストエンジニアリングです。多くの会社でつまずくのは前者ではなく後者のほうです。
会社として使い始めるときの順番
技術より先に決めておくと後戻りが減るものが、二つあります。
ひとつは、入力してよい情報の範囲です。顧客名や個人情報を入れてよいのか、どのサービスなら許すのか。使い始めてから決めると、すでに入れてしまった人が出てきます。判断の材料は入力データはAIの学習に使われるのかにまとめました。
もうひとつは、最初に当てる業務を一つに絞ることです。全社に配って各自の工夫に任せると、うまくいった人の使い方が誰にも引き継がれません。ひとつの業務で「この頼み方だとこう返る」を社内に残せた会社が、次に進めています。
言葉の意味が分かったら、次は中の仕組みです。生成AIの本体であるLLM(大規模言語モデル)から読み進めると、なぜ間違えるのか・なぜ社内資料を知らないのかが順につながります。
顧問先によく聞かれること
- 生成AIとChatGPTは同じものですか。
- 同じではありません。生成AIは技術の総称で、ChatGPTはその技術を使ったサービスの一つです。ほかにClaude、Gemini、Copilotなどがあり、それぞれ得意分野と契約条件が違います。社内で使うサービスを選ぶときは、機能より先に契約条件(入力したデータの扱い)を見ることをおすすめしています。
- 自社の業務にも使えるか、どう判断すればいいですか。
- その仕事が「決まった手順の繰り返し」なら、生成AIより関数やRPAのほうが安く確実です。逆に「毎回少しずつ違う」「文章や状況の読み取りが要る」仕事は生成AIの領分です。判断の分かれ目は、仕事の量ではなくばらつきの有無にあります。