AIの基礎知識
AI導入の相談で最初につまずくのは、たいてい技術ではなく言葉です。 「トークン」「コンテキスト」「RAG」——会議で飛び交うのに、社内の誰も同じ意味で使っていない。 ここでは、顧問先への説明でそのまま話している定義を、使う側の言葉で並べました。
書いているのは、IT企業ではありません。1970年創業の音響の会社で、 自社の業務をAIに任せながら覚えた言葉を置いています。 そして各ページには「◯◯の現場でいうと」という節を必ず入れました。 子育て・部活・習い事・勉強を見る場面——四人の子を育て、自分も水泳を続け、 数学の教員免許を持つ人間が、実際に使って伝わったたとえだけを載せています。 コンテキストもハルシネーションも、リレーの引き継ぎや進級テストに置き換えると、 専門用語のままより早く伝わる——顧問先で何度も確かめてきたことです。
この用語集について
- 誰が
- 北村惇士(株式会社サウンド・テック 代表取締役/AIコンサルタント)。 音響技術の会社の3代目として、商社・製造業・小売業のAI顧問を務めています。 芝浦工業大学 数学科卒(中学・高校の数学教員免許)。四人の子の父で、4歳から水泳を続けてきました。
- どう作ったか
- 下書きの作成にはAIを使い、定義・たとえ・現場の記述は私が書き、公開前に人が全文を確認しています。 たとえは教科書の言い換えではなく、家庭・部活・習い事・支援先で実際に使って伝わったものだけを載せています。 制度や仕様に関わる記述には、省庁・提供各社の一次情報だけを出典として付けました(ページ末尾)。
- なぜ
- 顧問先へ「まずこれを読んでください」と渡せる説明が、自社の言葉で必要だったからです。 他社の解説ページを紹介していると、その説明と自分の話が食い違います。
基本のことば
会議で出てきたときに、意味が取れれば足りる言葉。
生成AI Generative AI
指示に応じて、文章・画像・表・コードなどを新しく作り出すAI。データベースから答えを探すのではなく、その場で組み立てて返すところがこれまでのシステムと違います。
読む →LLM(大規模言語モデル) Large Language Model
大量の文章を読み込み、「次に来る言葉」を選び続けることで文章を組み立てるモデル。生成AIサービスの中で実際に考えている部分にあたります。
読む →推論モデル(考えるAI) Reasoning Model
答える前に、内部で手順を組み立ててから回答するモデル。すぐ答えるモデルより時間はかかりますが、筋道を追う仕事で差が出ます。
読む →トークン Token
AIが文章を読み書きするときの最小単位。単語より細かく文字より大きい区切りで、料金の計算にも、一度に渡せる情報量の上限にも、この単位が使われます。
読む →コンテキストウィンドウ Context Window
AIが一度に見渡せる情報の広さ。指示・添付資料・それまでの会話がすべてこの中に収まり、あふれた分は視野から消えます。
読む →ハルシネーション Hallucination
AIが事実と違う内容を、もっともらしい文章で出力してしまう現象。仕組み上ゼロにはできないため、業務では「起きる前提でどこに確認を置くか」を設計します。
読む →マルチモーダル Multimodal
文章だけでなく、画像・音声・動画も入力として扱えるAI。手書きの帳票や現場写真を、文字に起こさずそのまま渡せます。
読む →中の仕組み
なぜ間違えるのか・なぜ社内資料を読めないのかが分かる言葉。
学習と推論 Training / Inference
学習はモデルを作る工程、推論は出来上がったモデルを使う工程。日々の利用はすべて推論側で、そこで渡した情報が自動でモデルに残るわけではありません。
読む →RAG(検索拡張生成) Retrieval-Augmented Generation
質問のたびに社内文書から関連部分を探し出し、それを材料としてAIに答えさせる仕組み。モデルを作り変えずに、自社の情報を反映させる方法です。
読む →チャンク分割 Chunking
長い文書を、検索して取り出せる大きさに切り分けること。切り方が粗いと的が絞れず、細かすぎると前後の文脈が失われます。
読む →埋め込み(ベクトル化) Embedding
文章の意味を数値の並びに置き換える技術。言い回しが違っても意味が近ければ近い数値になるため、キーワードが一致しない文書も探し出せます。
読む →ベクトルデータベース Vector Database
文書を数値の並び(ベクトル)にして保管し、意味の近さで取り出せるようにした保管庫。社内文書をAIに読ませる仕組みの土台になります。
読む →ファインチューニング Fine-tuning
既存のモデルに自社のデータで追加学習させ、特定の書式や文体に合わせて調整すること。事実を覚えさせる用途には向きません。
読む →使いこなしの設計
個人の工夫から、会社の仕組みへ移すための言葉。
プロンプトエンジニアリング Prompt Engineering
AIへの指示文を設計して、望む出力を安定して引き出す技術。効果はその一回のやり取りに限られ、書いた本人以外には引き継がれません。
読む →temperature(出力のばらつき) Temperature
AIの出力にどれだけ幅を持たせるかの設定。低くすると答えが安定し、高くすると表現の幅が広がります。ゼロにしても完全には揃いません。
読む →コンテキストエンジニアリング Context Engineering
AIに渡す情報——業務の前提・判断基準・社内の言葉・参照する原本——を整えて置いておく設計。頼み方と違い、一度作れば直すまで効き続けます。
読む →システムプロンプト System Prompt
会話が始まる前にあらかじめ設定しておく指示。役割・前提・禁止事項を仕込んでおくと、使う人が毎回書かなくても効き続けます。
読む →AIエージェント AI Agent
目的を渡すと、必要な手順を自分で組み立て、道具を使って実行まで進めるAI。答えを返して終わるチャットとは、任せられる範囲が変わります。
読む →マルチエージェント Multi-Agent
役割を分けた複数のAIを分担・連携させる構成。一体で抱えきれない仕事を分けられる一方、体数が増えるほど確認と費用も増えます。
読む →MCP Model Context Protocol
AIと外部のツール・データをつなぐための共通仕様。個別に作り込む代わりに、決まった差込口を用意しておく形にすると、AIを乗り換えても接続をやり直さずに済みます。
読む →ワークフロー自動化とAIエージェント Workflow Automation
あらかじめ決めた手順どおりに処理を流すのがワークフロー自動化。目的から手順を組み立てるのがAIエージェント。確実性と柔軟性のどちらが要るかで選びます。
読む →評価データセット Evaluation Dataset
AIの出力を測るために、事例と「こうあってほしい答え」を組にして用意したもの。感触ではなく同じ物差しで比べるための土台になります。
読む →現場で運用するとき
使い始めたあと、続けるために決めておく言葉。
入力データの学習利用 Training Data Usage
入力内容が今後の学習に使われるかどうかは、仕組みではなく契約と設定で決まります。個人向けと法人向けで扱いが違うことが多く、各社の公式な条件を確認して判断します。
読む →AIの精度検証 Evaluation
AIの出力が使えるかどうかを、感触ではなく事前に用意した正解と突き合わせて確かめる工程。導入の可否と、運用中のずれの検知の両方に要ります。
読む →社内AI利用ルール AI Usage Policy
社員がAIを使うときの線引きを、会社として決めたもの。禁止事項の一覧ではなく「入れてよい情報」「使ってよい場面」を先に書くと、現場が動けます。
読む →シャドーAI Shadow AI
会社が把握していないところで、社員が個人の判断でAIを使っている状態。禁止を強めるほど見えにくくなり、契約条件の確認も効かなくなります。
読む →AIリテラシー研修 AI Literacy Training
社員がAIを判断して使えるようにするための教育。操作の手順より、任せてよい仕事と任せてはいけない仕事の見分け方を扱うと残ります。
読む →AI利用料の考え方 AI Pricing Model
AIの費用は、利用量に応じた課金・定額・人数課金の組み合わせで決まります。量に効くのは処理の回数と、一回あたりに渡す情報の量です。
読む →経営とガバナンス
導入の可否と、その後の責任を判断する側が押さえておく言葉。
AI事業者ガイドライン AI Guidelines for Business
総務省と経済産業省が示した、AIに関わる事業者向けの指針。開発者・提供者・利用者の三つの立場ごとに、留意することが整理されています。
読む →著作権とAI生成物 Copyright and AI
AIと著作権は、学習させる段階と、出てきたものを使う段階を分けて考えます。実務で気をつけるのは、たいてい後者のほうです。
読む →個人情報とAI Personal Data and AI
AIに個人情報を入力してよいかは、当初の利用目的の範囲に収まるか、サービス提供者をどう位置づけるかで変わります。その場の判断に任せず、先に線を引いておく領域です。
読む →オンプレミスとクラウド On-Premises / Cloud
AIを自社の設備で動かすのがオンプレミス、事業者のサービスとして使うのがクラウド。持ち出せないデータがあるかどうかが、判断の分かれ目になります。
読む →PoC(実証実験) Proof of Concept
本格導入の前に、小さく試して効果と課題を確かめる工程。何をもって次へ進むかを先に決めていないと、成果が出ても止まります。
読む →AIと人の役割再設計 Role Redesign
AIに任せる範囲と人が担う範囲を、業務ごとに引き直すこと。作業を渡した先に人が何をするかまで決めて、はじめて効果が残ります。
読む →各ページは、そのまま社内の勉強会資料や新任担当者への引き継ぎに使ってかまいません。 リンクを社内に共有していただくのも歓迎です(転載時は出典として本ページのURLを添えてください)。 非IT企業の会議でそのまま話せるように、たとえは家庭・部活・習い事の場面に寄せています。 「うちの業務で言うとどれに当たるのか」は、言葉だけでは決まりません。そこは個別に見ます。