ワークフロー自動化とAIエージェントの違い——決め打ちの道と、その場で決める道
あらかじめ決めた手順どおりに処理を流すのがワークフロー自動化。目的から手順を組み立てるのがAIエージェント。確実性と柔軟性のどちらが要るかで選びます。
業務の自動化を検討すると、二つの方式が並びます。手順を決めて流す方式と、目的を渡して任せる方式。
見た目には似ていますが、向く仕事がはっきり違います。
決め打ちの道
ワークフロー自動化は、手順を先に決めておく方式です。
申請が出たら承認者に通知する。承認されたら台帳に記入する。記入したら関係者にメールを出す。条件分岐を含めて、通る道をすべて書いておきます。
利点は、確実さです。同じ入力なら必ず同じ結果になり、何が起きるか事前に読めます。動かなければエラーが出るので、止まったことに気づけます。費用も予測できます。
弱点も、そのまま裏返しです。書いていない道は通れません。想定外の様式が来ると止まり、画面が変われば動かなくなります。例外のたびに書き足すことになり、条件分岐が増えるほど誰も全体を把握できなくなります。
子育ての現場でいうと
朝の支度は、順番が決まっています。起きて、顔を洗って、着替えて、朝ごはん、歯磨き、持ち物。決まっているから、こちらが逐一言わなくても流れます。
ところが、誰かが熱を出した朝は、その順番が全部崩れます。決めておいた順番は、崩れた日には何もしてくれません。 その場で判断して組み直すのは、結局こちらです。
だから、両方を持ちます。いつもの日は決めた順で流し、崩れた日だけ手で当てる。全部を貼り紙に頼る家も、全部をその場で決める家も、どちらも回りません。
業務の自動化も同じです。九割は決め打ちで流し、崩れる一割にだけAIを当てる。九割のために全部を作り直す必要はありません。
その場で決める道
AIエージェントは、目的を渡すと手順をその場で組み立てます。
想定していなかった様式が来ても、読み取って続けようとします。書いていない例外にも、判断して進みます。
弱点は、確実さが落ちることです。同じ入力でも、返ってくるものが揺れます。何をするか事前に読み切れないので、記録と確認の設計が要ります。処理のたびに費用が発生し、量が増えれば積み上がります。
分け方の基準
一言でいうと、書き切れるかどうかです。
| 決め打ちで書ける | 書き切れない |
|---|---|
| 様式が決まっている | 毎回様式が違う |
| 条件が有限(数えられる) | 例外が読み切れない |
| 判断が機械的(数値の比較) | 文章の読み取りが要る |
| 間違いが許されない | 下書きとして使える |
現場で見ていて多いのは、九割は書き切れるのに、残りの一割のために全体を止めているという状態です。手書きの備考欄があるせいで、自動化を諦めている。例外的な取引先があるせいで、全部を手作業でやっている。
この場合、九割を決め打ちで流し、残りの一割の判断だけAIに任せる組み方が効きます。丸ごとAIにする必要はありません。
混ぜて組む
実務で回っている構成は、たいてい混ざっています。
- 通知・記録・受け渡しは、決め打ちで流す
- 分類・読み取り・下書きの生成だけ、AIを呼ぶ
- 取り消せない操作の手前に、人のゲートを置く
こう組むと、AIが外したときの被害が一工程に閉じます。全部をAIに置き換えた構成は、どこで狂ったのか追えず、戻すのも難しくなります。
判断のときは、「AIでどこまでできるか」より「決め打ちで書けない部分はどこか」から入ってください。そちらのほうが、話が早く着きます。
顧問先によく聞かれること
- どちらから検討すべきですか。
- 決め打ちで書けるなら、そちらが先です。安く、速く、間違えず、担当者以外にも動きが読めます。書き切れないところ——例外が多い、判断が要る、入力の形が揃わない——が出てきたときに、その部分だけAIに任せる順番が費用に見合います。
- 既存のワークフローツールにAIを足せますか。
- 足せる製品が増えています。全体はこれまでどおり決め打ちで流し、判断が要る一工程だけAIを呼ぶ形です。丸ごと作り直すより現実的で、うまくいかなかったときに元へ戻せるのも利点です。